●クラス演劇





1、序章


趣味は高校文化祭のクラス演劇鑑賞です。
と、いうと「女子高生目当てかよー」とかぬかす輩がたまにいます。

残念ながら彼らにはクラス演劇というものの本当の魅力が分かっていないのでしょう。
高校の文化祭において、クラス演劇とはまさに白眉!
この楽しさが分からない人は本当に哀れで仕方ありません。

というわけで、このページでは簡単にクラス演劇の魅力正しいクラス演劇の楽しみ方を紹介いたします。
なお、ここでいう「クラス演劇」には基本的に演劇部の演劇は含みません。
ただし、クラス単位で作っている映像作品(ビデオ映画など)はこれに含みます。



2、クラス演劇の正しい楽しみ方


クラス演劇には基本的にあらゆるものが不足しています。

まずは時間。文化祭の準備期間など通常の演劇に掛けられる時間と比ぶるべくもありません。
そして技術。基本的に役者となる生徒たちは演劇に関してはずぶの素人です。発声も活舌も知りません。そもそも多くの人たちは台本を覚えることだけで手一杯でしょう。
次に知識。演劇部などのように継承されるノウハウの類もありません。全てがイチからの手作り。試行錯誤の産物です。
さらには経済力。文化祭のクラス演劇では収入が見込めないため、大道具・小道具・衣装、その他全てにおいて、金をかけることができません。効果音やBGMもPAでも使ってやりたいところですが、実際にはラジカセで流すのが精一杯なのです。

さて、ここでみなさんは思うでしょう。
金も技術も時間も知識もないんじゃあ、出来上がるのはしょせん自己満足のへなちょこ演劇ではないのか、と。

確かにそうです。
多くのクラス演劇はこれらの点に阻まれ、大成することなく消えていきます。
ですが、あるのです!
これら幾多の問題点を撥ね退け、人々の記憶にしぶとくカビのようにこびり付く、強力な個性をギラギラと放つクラス演劇の星は存在するのです!!


では、それらの問題点を克服し、クラス演劇を大成させるのに必要な要素(ファクター)とは何でしょう。
それ、すなわちエネルギー!!
若者の有り余るエネルギーと、それに付随する画期的で自暴自棄なアイデア
お金がないから、
知識がないから、
経験がないから、
技術がないから、
だから、彼らはエネルギーだけで解決しようとするのです!!

全てを気合と!情熱と!迫力と!アイデアだけで解決しようとする、そこに奇蹟の化学反応が現れ、クラス演劇の星は誕生するのです!!

つまり一言で言うならば、「有り余るエネルギーが産み出す画期的なアイデアが、人の知性の殻を破ったとき!そこにこそ、クラス演劇の星は生まれる!!」ということでしょうか。



3、事例紹介


実際に、僕が感動し余りの衝撃にその場にへたれこんでしまった事例を紹介しましょう。

それはビデオ映画で、「新世紀ぬらりひょん」というものでした。
当時、巷では「新世紀エヴァンゲリオン」が大ブーム。
特にOP(オープニング)ムービーがそれまでのアニメOPとは一線を画すクオリティで、世のアニメ好きたちに「エヴァのOPすげえよ!」と言われていたものでした。

そしてなんと!「新世紀ぬらりひょん」ではそのOPを無謀にも実写で再現
実際のエヴァのOPは、登場人物が目にもとまらぬ速さで次々と映し出され、またその合間に「監督 庵野〜」といったテロップがこれまた瞬時に挟まれるといったものです。
もしこれを常識的な人間が実写で作るならば、出演者(生徒)の顔を一人ずつビデオに撮影し、それを編集して作り上げることでしょう。
ですが、奴らはノーカットで作りやがったのです!!

つまりはこうです。
まず、カメラは正面で固定。
その横でエヴァOP曲「残酷な天使のテーゼ」をラジカセで流します。
そして、曲にあわせ、カメラの前で数人の男がものすごいスピードで顔を出したりよけたりします。
何の小細工もありません!どの顔もすごく辛そうです!みんな焦ってます!!
顔の合間にも監督名などが書かれた紙を挟むなど(紙を持ってる手が映ってる!)、細かな芸も忘れていません。

そして1分あまりの嵐のような時間は過ぎ去り、本編が始まります。
本編は、OPを撮り終わった直後なのか、みな疲れきった表情をしており、10秒くらいで終わります。
このなし崩しな自暴自棄感がまたサイコーです!!
まさにクラス演劇の星!!

というわけで、この映像作品の妙味は全てOPの実写再現にあったわけですが、もし、これを常識的にビデオで編集したならば、果たしてここまでの衝撃を与えられたでしょうか?
答えはNO!だと僕は考えます。
なぜなら常識的にビデオで編集するという行為は、やはり常識的な行為だからです。常識を見せられても感動はしません。
例えば今僕が同じ事をするなら、せっかくパソコンがあるんだから、と当然のようにノンリニア編集をしてしまうでしょう。
そこに技術があるのに使わない、というのはよっぽどの覚悟と先見、そして周りへの説得を必要とします。
ですが、それを「知識がないから」「金がないから」「時間がないから」という理由で、ストレートに行えるのが、まさに高校文化祭なのです!!
いわば、高校文化祭は素晴らしい作品を作る特権的な舞台なのです!



4、一歩進んだ楽しみ方


さて、ここまではクラス演劇について、いわば基本的な事を語ってきました。
ハッキリいってここまではクラス演劇マニアの方には常識だと思います。
ですので、ここでは中級者クラスの為の「クラス演劇の一歩進んだ楽しみ方」をお教えしましょう。

  • 身内ネタを出す

クラス演劇でよく見られるテクニックの一つです。
具体例を挙げれば、
「担任に女装をさせる」
「悪人の名前を校長にする」
「クラスの中だけで流行ってるネタを使う」
「とりあえずコイツを使っときゃ面白いだろう、という人物を使う」
などなどです。

なお、このテのネタを専門用語で「ウチ」といいます。覚えておいてください。
「ここでウチを使ってきたかあ」
「ちょっとこのクラスはウチが多すぎたな」
という感じで使います。
また、例4の「とりあえずコイツを使っときゃ面白いだろう」的な人物のことを「アイドル」と呼びます。これも覚えておいてください。

このテクニックはかなり使いどころが難しく、身内の客と外来の客との温度差などを考えると、そうそう安易に使えるものではありません。が、実際にはかなりの頻度で使われます。
これを上手く使うことが出来れば、外来の客に良い意味での「置いてけぼり感」を与えることが出来ます。「ああ、このクラスはずいぶん仲が良いんだなあ」という印象を与えられるのです。しかし、やはり多用は禁止です。
ただ、「アイドル」の中にはその余りに濃すぎるキャラクター故、外来の一見客にまで影響を与えられるプレイヤーがいるので油断は禁物です。なお、そういう人物は往々にして自分が「アイドル」だと気付いていません

  • 一発ネタに注目する

高校文化祭のクラス演劇などでは、締め切り(本番)のプレッシャーからか、準備の過酷さからか、とつぜん突拍子もないアイデアが通ったりします。本来の文脈とは全く関係のない一発ネタが突然現れることを専門用語で「飛び道具」といいます。覚えておいてください。

これらの一発ネタは全体のイメージを大きく損なう可能性があるのでやはり多用禁止ですが、案外ウケることの方が多いです。
こういった理不尽な飛び道具を気軽に使うことが出来るのが、やはりクラス演劇の醍醐味の一つではないでしょうか。
長い時間と練習とお金を掛けての演劇ならば、これだけのことにも勇気がいるものです。

なお、もし飛び道具を文脈に絡めることが出来れば、相当の武器になります。



5、まとめ


いかがでしたでしょうか。
これで少しはクラス演劇の楽しみ方が分かってもらえたのではないかと思います。
決して僕が女子高生目当てではないことを理解していただけたでしょうか(本気)

どうしてもクラス演劇を楽しんで見れない、という方にもう一つだけヒントを差し上げましょう。
演劇の性質上「難しい表現」に注目して見てください。
例えば、「ボール(ソフトボールなど固いもの)を投げる」「物が消える」などです。
こういった難解な表現には、努力と振り絞ったアイデアの跡が良く現れます。
今考えたら、「なんであんな表現をしたんだろう」と苦笑するようなムチャなことを、僕もやっていたものです。

それでは皆さんもこれを参考に快適な文化祭巡りを楽しんでください。



クラス演劇関連リンク


正確には文化祭に関するHPです。
上には上がいるとは思っていましたが、僕よりも遥かに格上のクラス演劇マニアのようです。
北は北海道、南は長崎まで、1104校を経験しているようです(1998年12月時点で)
ただクラス演劇に関する視点は僕とは少々異なるようです。


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