●『君主論』研究_第一ニ章





『軍隊にはどれほどの種類があるか、また傭兵隊について』
〔第一一章までで、様々な形の君主政体の特徴を見てきたので、第一二章からは、それら君主政体が持つ軍備について見ていくことになる。第一二章では、特に傭兵が役に立たないことについて書かれている〕

・君主にとって必要なもの
1、良き法律
2、良き軍備

『良き軍備のないところに良い法律はありえず、また良き軍備のあるところには必ずや良き法律がある』という前提から、第一ニ章以降は法律については省略され、軍備についてのみ書かれる。


軍備の種類――自己の軍(○)
          傭兵軍(×)
          援軍(×)
          混成軍(△)


【傭兵軍について】

・傭兵軍とは
『不統一であり、野心に満ちていて、規律がなく、忠誠心を欠き、味方の前では勇敢だが、敵の前では臆病になり、神を畏れず、人間には不誠実』

・傭兵軍がそのような軍である理由
『わずかばかりの給金のために積極的に戦う理由も愛着もないから』

傭兵隊長――軍備に卓越した人物:A
         卓越してない人物:B

A:傭兵隊長に実力があれば、君主を裏切る。
B:傭兵隊長に実力がなければ、戦争に負けて滅びる。

⇒つまり、傭兵隊長に任せるのではなく、指導者層が自ら戦地で指揮を取れ、との話。
『君主ならば自ら陣頭に立って指揮官の役割を果たさねばならない。共和政体ならばその市民(※1)を派遣しなければならない』

派遣した市民が無能であれば別の市民と交代させ、有能であれば彼を法律で規制し権限を逸脱しないようにしなければならない。また、外部の軍備で武装した場合よりも、自己の軍備で武装した共和政体の方が、市民の一人に隷従する危険性は少ないと、マキャベリは言う。

※1
一般市民ではなく、代表市民と思われる。

・傭兵軍を用いて困ったことになった例
1、カルタゴ人
2、マケドニアのフィリッポス
3、フランチェスコ・スフォルツァ

・傭兵軍を用いても困ったことにならなかったフィレンツェはただ運が良かっただけ
1、その傭兵隊長が戦争で勝てなかった
2、その傭兵隊長には敵対勢力があり容易に動けなかった
3、野望を他に転じた(違う領地を求めるなど)


・傭兵とイタリアの歴史
ブラッチョ、スフォルツァなどの有力は傭兵の一門は、名声を得るために歩兵ではなく騎兵を用い、また、互いに相手の兵士を捕虜としても身代金も取らずに解放したり、夜になれば戦闘を止めたりと、馴れ合いで戦争をしていたために、フランスやスイスなど外国勢力が攻めてきたときに太刀打ちできなかった

 
第一二章のまとめ

軍備の種類――自己の軍(○)
          傭兵軍(×)
          援軍(×)
          混成軍(△)

傭兵軍は役に立たない。
傭兵隊長が有能であれば雇い主である君主を脅かし、無能であれば戦争で勝てない。
これまでの歴史で傭兵を使いながらも、問題なく領土を広げられたフィレンツェは単に運が良かっただけである。
また、傭兵同士の戦争は馴れ合いになり、お互いに危険を避けるための軍事規則を設けていた。
そういった戦闘状況が国内で続いていたために、軍は弱体化し、フランスなどの外国勢力に勝てなくなった。
君主は傭兵隊長を使うのでなく、自ら陣頭で指揮を取らなければならない。


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